ひびきあふ

自然の音と響き合ふ

タグ:万緑

野に在りて詠まむ
命のほのほ在りて
詠まむとす

万緑の中にあって、人は思考能力を停止させられてしまう。
そのあまりな、濃厚さに圧倒されるからである。
新緑の頃は、緑をいくら重ねても翠が崩れない。
だがしかし万緑の候は、緑を重ねることによってその翠は漆黒の闇に転化するのだ。
言い換えれば、翠は黒になるのだ。

万緑は、黒の同義語である。
光の全てを吸い込んで、闇を深めてゆくのである。


万緑ー2
 
  万緑の光閉じ込む闇深し

         荒 野人
 

野に在りて詠まむ
命のほのほ在りて
詠まむとす

こんなに綺麗な新緑は、青紅葉をもって嚆矢とする。
今の時期、緑はいくら重ねても翠である。
万緑になると重ねる緑は、黒き深さを持つ。

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これほど目に優しい緑は、今だからこそである。
この季節「思い葉」と云う言葉がある。
ブログを通じた友・・・会った事とてないけれど「季語さん」が教えてくれた。
葉と葉が重なって、透過光がきらきらする。
そんな景色を想起していただければ良い。
或いはまた、愛する二人のことと拡大解釈しても良い。

美しいオマージュであり、美しい言葉である。


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 思ひ葉の重なる翳や青紅葉

          荒 野人


野に在りて詠まむ
命のほのほ在りて
詠まむとす

蒸し暑い、のである。
あと何回、この責めを耐えれば良いのか。
 
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万緑と云うには、蒸し蒸ししすぎる。
万緑には、さわやかな風が吹き渡るけれど・・・。
晩夏と初秋との狭間では、蒸し暑さが募る。
緑もまた、黒々と深みを増してゆくのだ。 

秋の気配はするのだけれど・・・。
体感温度は、湿度との勝負である。 
だがしかし、ウクライナの原発を巡る状況を考えると寒さをも覚えるのだ。
寒さというより、おぞましく身も凍る思いである。
だが然し関東地域は、朝晩めっきりと秋らしさを増しつつある。
寝易いのは、嬉しいことである。


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 人が踏む踏みし跡から秋気かな

            荒 野人
 

野に在りて詠まむ
命のほのほ在りて
詠まむとす

万緑の中で、巣箱が朽ちている。
鳥は、巣立っただろうか。
ずっと、この巣箱を見つめ続けているけれど・・・。
小鳥の姿は、一度だけ見た事がある。
見続けた期間は、ほぼ8年くらい経っている。

鳥がいなくても良い、風情が愉しめたのだから。 
そう思っている。
戻り梅雨の一日、晴間があって日傘をさして通り過ぎた。
この日、ぼくは日傘デビューしたのであった。


22年7月17日万緑巣箱
 

 万緑や空っぽの巣箱の朽ちて

           荒 野人
 

野に在りて詠まむ
命のほのほ在りて
詠まむとす

これほど名句に恵まれた季語、も無かろう。
草田男の句は、入門句としては最強である。

 万緑の中や吾子の歯生え初める  草田男

人間探求派の俳人でありました。


22年5月26日万緑
 

 万緑や踏み込まば人とは会わぬ

             荒 野人
 

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